[記事] パラリンピック

Go!Go!里奈!! 全盲の水泳選手秋山里奈と応援団のパラリンピック

 パラリンピック最初の予選前、直前のジャパンパラで世界新を出したばかりの全盲の水泳選手、秋山里奈さん(24)の応援団とお会いすることが出来た。ご両親と応援団長の伊藤さんとは、6月10日にさいたま新都心で開催された第26回関東身体障害者水泳選手権大会以来だ。「ちょっと、我々の意気込みを撮ってください!」と入場口で陣形を作る応援団。並び方やポーズなども考えて臨む気合いの入れようだ。

何度もバランスを確認して、うちわや幕を広げる頼もしい応援団。(写真:矢萩邦彦/studioAFTERMODE)

 ほぼ満席のアクアティクス・センターを歓声と拍手が埋める。日の丸の鉢巻きに扇子を差した姿で応援に駆けつけた岩田さんは、「せっかく東西の席で分かれて応援するんだからって、色々練習したんだけどね、向こう側が見えないよ!」と波打つデザインの天井を恨めしげに見上げた。この日、応援団はプールを挟んでウエストサイドとイーストサイドに分かれての応援となった。お手製の「GoGo里奈うちわ」はデザインも色々だ。

波打つデザインの会場は応援席同士のコンタクトがとれない。(写真:矢萩邦彦/studioAFTERMODE)

「なんとか精神的に落ち着いてくれればね…… だいぶ緊張してたみたいだから」。

 勝って欲しいけれど、勝ちだけがすべてではない、そう言い聞かせる応援団の方が緊張しているように見えた。里奈さんは三度目の日本代表。その度に応援団が出動するという。

 イギリス選手が出場するレースの声援の大きさに、「これじゃあ声が届かないよ…… でも応援するのみです!」と鉢巻きを締め直す。

お手製のグッズを手に、声をからして叫ぶ応援団。(写真:矢萩邦彦/studioAFTERMODE)

 種目は「女子100m自由形S11」。S11は完全に視力がない、つまり全盲のクラスである。パラリンピック競技に付いているアルファベットは競技を、数字は障害の種類と程度を表していて、数が少ないほど重度の障害クラスである。基本的に障害のない競技のルールと変わらないが、水中からスタートしても良く、コーチが棒でたたいてターンやリレーのタイミングを教えることも許されている。

水中からのスタート。しなやかな中にも緊張が見える。(写真:市川亮/LIVEonWIRE)

 スタートすると、「Go!Go!里奈!! Go!Go!里奈!!」応援団の声援が響く。思わずカメラを片手に僕も声を上げる。まるで自分の子供や孫を応援するような真剣なまなざしに、なぜか自分まで頑張らなきゃ、という気にさせられる。出だしは好調だったがターンで少し遅れを取った。応援団も声をますます張り上げる。順位は関係ない、最後まで応援する覚悟だ。

自由形のレースに果敢に挑む背泳ぎの秋山里奈選手。(写真:市川亮/LIVEonWIRE)

 結果はフォルス・スタート(水泳競技で合図よりも前にスタートしてしまうこと)で残念ながら失格。応援団からは「肩慣らしだよ。背泳ぎでクロールと戦ったんだ、立派なもんだよ!」「まだまだこれから、本番は明後日だよ」と声が上がる。

 明後日は「女子100m背泳ぎS11」だ。背泳ぎは里奈さんの真骨頂、結果を期待してしまうのはもちろんだが、なによりアスリートとしての素敵な泳ぎが楽しみだ。

午後の決勝を応援する秋山里奈選手。夢はまっすぐ、ともに前へ。(写真:安藤理智/studioAFTERMODE)